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自然農法で「愛妻米」 病の苦しみ和らげたい

 七尾市能登島でただ一人、農薬などを一切使わない米作りに取り組む農業青山登世明(とよあき)さん(62)=能登島閨(ねや)町=が27日までに、自然農法米のブランド化に乗り出した。肝炎を患う妻やす子さん(60)のため、「安心安全なコメで元気になってほしい」と従来の農法から自然農法に転換。やす子さんの体調を回復させた愛情いっぱいのコメを「島の愛妻米」と命名し、全国に発信していく。

 12年前に肝炎と診断されて以来、やす子さんは体調の悪さや足腰の痛みを訴え、床に伏せる日が続いた。青山さんは、妻の苦しみを少しでも和らげようと1日2時間以上、足や腰、背中をマッサージしたが、一向に改善しなかった。やす子さんは食事が喉を通らない日もあり、青山さんは「見ていられんかった」と振り返る。

 「毎日食べるコメだけでも、薬を使わん安全なもんを食べさせたい」。兼業農家である石材店3代目の青山さんは昨年、一念発起。水田約2500平方メートルのコシヒカリを、農薬や除草剤、化学肥料を使わない自然農法で栽培し始めた。

 雑草は素手で取り除き、害虫は竹ぼうきを振って追い払うなど、自然農法は思っていた以上に重労働だった。それでも青山さんは「暑くてつらくても辞めようとは思わんかった。そんなときは妻の苦しむ姿が頭に浮かんだわ」と毎日、田に出て、昨年秋、約900キロのコメを収穫した。

 「甘くておいしくて、ご飯が喉を通ったんです」。自然農法米を食べ始めて2カ月後、やす子さんの体調は医師も驚くほど良くなり、今では和倉温泉の旅館で働くほどだ。症状の緩和が自然農法米によるものかどうか、医学的根拠はないものの、七尾市農林課によると、能登島の水田の赤土にはミネラルが多く含まれ、農作物の味をよくする効果があるという。

 七尾市内で7月、自然農法に関する講演を行ったフリージャーナリストの山本なつさんが、青山さんの米作りへの情熱と夫婦愛に感動し、この自然農法米を「島の愛妻米」と名付けた。

 今年は作付面積を倍に増やし、約1800キロの収穫を目指す。青山さんは、能登島で自然農法の米作りを広げ、全国の百貨店などに販路を拡大するとしており、「妻を元気にしたコメをたくさんの人に味わってほしい」と話した。